水の歌/塔野夏子
その水に出逢うと
わたしはやわらかい小さな舟
その水面をゆく舟でもあり
その水中をゆく舟でもあり
その水の波を 凪をゆく
瀬をゆき 瀞(とろ)をゆく
ただその水を感触しながらゆく
水は水として
けれどさながら風であり森であり
空であり 炎でさえあって
けれど苦い混濁
重い影の底から
星に焦がれ
水は呻き
そして歌う
自らの中を漂う
数多の言葉を
水の中ゆえ
さだかには見定められず
消えてはあらわれ
あらわれては消え
(水をゆく
わたしというやわらかい舟も
ここではかたちのさだまらぬ
言葉なのかもしれず)
浮か
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