Jack et Jacques/墨晶
 
、もうそれ、お茶じゃないですよ?」
「・・ジャック・・もう来ないでくれと云った筈だ」
「本気で云っているんですか? 先生、ぼくのこと考えていたでしょ? さっきから」
「・・・・」
「ツレないな。でも、云い訳なんて要らないです。全部、わかってますから、ぼくは」
 この無作法な青年が勝手にわたしの住まいに現れるようになってどれくらいだろう? 異国で、途惑いの中、始めたわたしの生活に、ふらりと現れた彼はしばらくはわたしの心の杖と云って良かった。しかし今や、生きていく上での仇敵と云って良い。
「先生、楽しいこと、しましょうよ、いつも通りに。道具は、全部あの鞄の中ですよね?」
「わたしの・・胸
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