アジの開き/ひだかたけし
 
愛しい、という感情
愛しい世界、というオドロキ!




アジの開きが店頭に並べられ
幼子は母親が店内で勘定を済ましてくるのを
待っていた
アジの開きを弄りなから、
長らく長らく待っていた

手のひらで

突然、アジの開きがピッタリ
閉じ重なり、一個の魚の形になった
幼子はびっくり
アジの、開き、という
名前も気付かず
アジの開きはアジの開きの形のまま
海を泳いでいる、と思っていたから

一個の一匹の魚の、
突然の出現に

幼子はひっくり返りそうに
驚いた
アジの開きはアジという
一匹の魚を開いたモノ、
だった!
アジという存在の不意の出
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