脱出(四)/朧月夜
「次元跳躍を使いましょう、エインスベル様」ヨランが言う。しかし、
「待て、ヨラン。次元跳躍は、今は使えない。リグナロスがいるのだ。
次元跳躍は、その手に触れている者にしか、効果は発揮されないのだろう?
しかし、ここには四人の人間がいるのだ」と、エインスベル。
「それはそうでございます。ですが、エインスベル様、御身が……」
「味方を見捨てて行くわけには行かぬ。このリグナロスは、
その生命を賭して、わたしを助けようとしたのだ。
お前はここへ来て、贄(にえ)を望むのか?」
「滅相もございません。エインスベル様に何かお考えがあるのなら……」
「この監獄の虹の魔法石は消えた。今では、魔術も効果があるであろう。
わたしは、転移魔法を使いたいと思う。それなら、全員が脱出可能だろう」
「転移魔法ですか。それも良い案だとは思いますが、
ここは、堂々と正面をきって突破なされてはいかがでしょうか?」
「正面突破か。だが、わたしにはお前たちのような武器がない」
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