剥き出しの鉄を打ち鳴らす/ホロウ・シカエルボク
 

ツクツクボウシが啼きそびれたみすぼらしい晩夏からそのままスライドした秋の曇天は、思考回路が壊れた若い母親が道端に投げ捨てる紙おむつの色合いで、ホームセンターのワゴンから掴み取ったスニーカーの靴底は、昭和後期のままのアスファルトの路面で容赦なく擦り切れる、幼いころの擦過傷の記憶、貼り付けたまま数週間が経過した絆創膏が皮膚に植え付けていった悪臭は、まるで前借した急逝の臭い、父親の携帯電話はいつだって役に立たなくて、極潰しの息子たちは街金のATMで人生を塗り潰す、ろくでもない職にしか就けなくて白目は澱むばかり、仕方なく胃袋に注ぎ込むインスタントラーメンの涙のような塩味で真夜中は満員だ、小さな音で流れ
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