湿潤/ただのみきや
 
り得るか
また状況と個人差どちらが優勢か
そんな実験は行われない
きっかけは「互いに孤独だったから」
そんな言葉遊び





瞑る

声も朱に染まり
水面に燃えている
――ほら
   黒い翼が降りて――
惜しみこそすれ
飽くことはなく





卑猥

盲人の上まぶたで旅行鞄が転がった
蔓草に覆われた光の空港で

褪せてゆく 
かつて鮮血だった声が

頭の中と外を繋ぐ鳩
砂糖の翼は潮解する

白米のように顔もなく
溺れる群衆から生え出でて

ほほ笑む静物と化した
めくる指を待つだけのあなたは




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