残された怠惰/岡部淳太郎
いま僕は怠惰とともにある。一人消え、もう一人消え、最後の一人も消えて、僕だけが残された。その孤独を感じながら、怠惰に沈んでいる。まるで無人島に打ち上げられた難破船のような気分だ。ぼろぼろに朽ちた船はその隙間から潮風を通し、その船体は腐食しつつある。だが、僕は何もしない。この状況とともにあり、残された怠惰を楽しんでいる。蜻蛉ではなく海鳥たちが晴れ渡った空を飛んで啼く。彼等はおまえはいま孤独なのだと告げている。そう、僕は孤独だ。ひりひりと焼けつくように、この心身に孤独を沁み通らせている。そのことにきっと罪も悪もない。孤独も怠惰も、ただいまここに存在し、僕はそれらを享受しているだけだ。
(二〇二一年十二月)
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