夜空にある何かに/宏子
 
夜の田んぼは湿気た匂い
刈り取られた稲穂から
また柔らかな葉は伸び
もう実はつけない
水にめだかは見えない
でも蟹なら隠れられる用水路に
柵はなく、落ちて命をなくさないでね
「夜にも天気はあるんだよ
「月が閉じているから目を開けて
星座は垂直に降りてきて地球をかすめる
ときどきそれらがわたしの頬を焦がす
皮膚に刻される海の雨温図
あたたかい水の道もつめたい水の道も
昼も夜もいらない深海魚のコンパス
わたしたちいつから沈んでいたんだろう
でも生きていたことは綺麗だったよね

トラクターが通れるだけの
舗装の割れた道路
道たちの古さ比べて
古い順番に直していこう
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