ある日/ひだかたけし
思考といういきものが
紅に染まる夜明けを迎える
*
ある日、
手を握っていてくれた白衣の人
わたしだけ、荒れ果てた末、
冷たい手術台に横たわり
傷だらけ血塗れに肉、痛み裂け
温め仄か確か熱に包み込み
手を握っていてくれた白衣の人
黒い弾丸が迫って来る夜に
黒い弾丸が切迫する夜更け
アナタは溢れる愛を注いで
手術台に登る太陽は既に穢れ
人は降り注ぐ慈愛の雨に濡れ
ある日、
肉体は生きて魂は死んで
とっくに息絶えた
タマシイ抱え生きて
あなたは、あなたは
この無常の世に未来に、震え怯え
蒼い岩峰に聳り立つ糸杉
過ぎゆく
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