クーゲンドルにて(十六)/朧月夜
 
「分かった。エランドル様に会わせよう。
 もうしばらく待つが良い。オーマルが汝らを案内しよう」
ライディンゲルの、それは急な変化だった。そこには、
エランドルという人間の秘密が隠されているようだった。

だが、ライディンゲルは厳かに言った。
「人のなかには、死して神になる者がいる。悪魔となる者もいる。
 それは、エランドル様が生きていた時代からそうだった。
 そして、若き日のエランドル様は、それを止めようとした……」

「なんですって? エランドル様は世界を滅ぼしたのではないのですか?」
「違う。世界を滅ぼしたのは、ゴルドウィンという男だ」
「ゴルドウィン様こそ、世界を再生したその人では?」

「伝承とは、時代によって改変され、創作されるものだ。
 お前は、エランドル様について何を知っている? 何も知ってはいまい。
 それを、これから会って確かめると良い」ライディンゲルは、再び龍の身へと返った。
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