浸水式――擬人と踊る/ただのみきや
 
わたしに翼はなく
抱きとめる重さもない
とどかない深部の火傷
すでにあなたの一部
癒そうと濡らしても
濡らしても


  銀色の天気雨 きみは
  嬉しくて泣いているのか
  悲しいのに微笑むのか


脱いで脱いで裸になって
これ以上なにを
自分でもまだ見たことない
謂れかなにかをつかみ出し
いっしょに解剖できたなら

つかんでも捕まえても
やっぱり嘘
偽物ばっかりだけど
もどきも芝居も神懸ったら
代役くらいやれるでしょう


  油絵じみた紫陽花
  斜陽にうっとり死んでゆく
  秘密は秘密のまま
  ことばはことばのまま
  色味を変
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