永いひとつの息の向こうから/ただのみきや
丸薬
マリーゴールドみたいな顔をした女がいなくなると
わたしは鉛の裏地のジャケットはおって朝霧の中
高台通りを自殺者の絶えない学校の方へ歩いてゆく
いまごろ昨夜の懲らしめをミルクに溶かし仔狐たちは
丸裸のままのきみの突起をもてあそんでいることだろう
朝刊の灰色をした活字回廊から遊歩道へと迷い出て
占い師が酸欠気味の涙目で色彩に喘いでいる
鯨と孔雀を飼育するまぼろしで汚れた下着に火をはなち
持ち主のいない頭骨で釘を打つ真似をしている
たぶん雷のように素早く鈍重な命の思い込みが
戸惑う素振りを見せたかと思うとすぐに揮発して
空よりも大きなあの目に見つけられてゼロになる
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