記憶の奥/余りに早く亡くなった元義母へ/ひだかたけし
 
叫び、裂ける
記憶の奥に佇み
記憶の億を掴み

ただただ、わたしは畏怖する
ただただ、わたしは優しくなる

神々が踊る躍る
頂きの透明な湖面に
内底から、ぽつんとポツンと
涌出する、意味以前の声のヒビキ

わたしは震える、震えて
深みへ呑み込まれ、呑み込まれ

裂け目開き、陽は昇り
真紅の月明かり、照らす闇

剥がれ落ちるんだよ、
この小部屋の白壁から
溶解する時の断片が、
浮き出す実在の蠢きが、

冷え切る手のひら足裏
容赦なく降り注ぐ現の雨

  *

喜びはアッタ
悲しみはアッタ
困惑はアッタ
怒りはアッタ
いつも 透明な壁に 
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