橙色/あらい
今日のような満月では窓辺に腰掛けて
暗闇に踊るように舞う、ひとひらが
老蝶と落ち葉にくすぐられる
まっすぐにのびた星が流れるように
わたしたちは歩いていたことに気付かされる
秋の汀で記憶も体も、零れ落ちた涙が乾く頃に
姿、留めることなく枯れてしまうでものしょう
胸の内側で散り積もった思い出が水際に寄せては返す
くろいかげを縁取らせたばかりの 眼鏡の奥底を
曇らせたメッセージをそっと取り上げた日を返しては
ふっと振り向かせる、声も名前も忘れてしまった
この手で、いつの間にか、持ちきれないほどに
燃え尽きたあとに、すっと烟るように面影を引き連れて
視界をよぎりましたが、気のせいでしたか
未来と過去を置いてここに私と照らしている
ただみちゆくは
いつかだれかと
おもいかえせば
さわやかおりに
仄か懐か沁むよな
世な予な夜泣くか
悠く柔しい雨風に
あっけなく亡く
さよなら金木犀
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