明るい闇の中で(四)/朧月夜
 
「お前は何を知っている?」フランキスは問うた。
「何も」エインスベルは答える──「しかし、
 お前がこのエイソスの妻を誘拐しようとしたことは、知っていた。
 クーラスの差し金なのであろう?」
 
エインスベルはあくまでも表情を崩さない。
そのことは、世界そのものに対して彼女が無関心であることを、証しするようであった。
「いかにも、わたしは祭祀クーラスの要請でここへと来た。
 思わぬ邪魔が入ったがな」矜持を捨てずにフランキスが言う。

「今では汝は囚われの身。わたしたちの言に従うべきだろう」
「わたしは臆病者ではあっても、卑怯者ではない。
 お前へのような外道に対して、従う道理などない」

「賢明かつ清潔な判断だな。主君への忠誠を誓うか。
 それでこそ戦士というものだ。だが、祭祀クーラスが戦争を望んでいるとしたら、どうか?」
「戦争だと? 祭祀クーラスは平和主義者だ。お前のような悪党に否定されるものではない!」
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