花を負う/木立 悟
 



つぎはぎの笑顔
目を閉じた笑顔
ひらくたびに変わり
ひとつ前のかたちに
重なりゆく笑顔


鳥のようなさよなら
午後の水たまりの道を飛ぶ
雲ひとつなく まばゆさもなく
陽を見つめ返す水底の陽


翳りの流れに浮かぶ目は
さまざまな生きものの目に変わり
夜のような昼すぎの声
向かいあう歌を見つめている


赦された子はどこにいるのか
赦された子は
赦されない子のなかにいて
赦されるのは自分ではないと
苦しんでいる


子は見えない手を振り
子は見えない花を摘む
子はいつしかあなたになり
子はいつしかわたしになる
置き去りにされた
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