近藤さんち/ひだかたけし
 
近藤さんちの広い庭の半分は
辺り一面緑の草原だった

 君には僕がみえないの?
 綺麗な君、
 僕には君が見える、
 僕には君が視える、

近藤さんちは鍛冶屋だった
溶けて黒ずんだ坪中の鉄塊

 眠たげな高曇り
 刻まれる朝の鼓動
 僕はいったい誰なんだろう?

近藤さんちはいつも薄暗かった
のっぺり奥まる平屋だった

 高曇りの空をスッポンポンで駆け抜ける
 あれは、誰?あれは、君?あれは、僕?

それとも

  *
肉、
年老いて 若やいで 色褪せて 艶めいて

陽が昇る、地平を染め抜き
時計の針は進み

今日もまた
今日も、また
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