蛇のきもちのすべて/秋葉竹
 


刺し違えてもいいから
抱きあいたいほどの
引けない想いを
胸の裡の扉へ深く深く刻み込んだ
ただ、いまとなっては
その人の微笑みを微かにしか
想い出せないのはなぜだろう?

円環よ、
銀の月よ、
夜の世界を照らす鮮やかな想いよ、
浜辺を歩くふたりの足元に
真白な道を整えておくれ

だからこの蛇の過去も
忘れてはいけない古い一輪の花の絵画も
そのままにしておいてはいけない
胸の裡の扉なんかも
しっかりと固く閉めなくてはならない
簡単に逃げ出さないように

忘れたくないものがあるから
たとえばこんな蛇の影のような心にも

たとえばこんな蛇の薄いくちびるにも
ほほえむ未来は残されているのだろうか










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