散らばり/soft_machine
 
 *


あの日の窓には老松が見えた
名前も知らない
病に侵されていた松

みるみる蒸発していく内蔵を
野良犬に戻したかった
しかしわたしがその場を逃げたため
地面に残した印に和され

黒塗の鏡に投影された
黄金虫や
海月や小禽の
うぶ毛の微細な感触を

たのしみながら
弄んだのも
わたし

さっさと決めなさいと叫ばれ
残された時間も
水と共にある縁取りのむこう


 * * * *


慈しむの
食べるの

もっと棄てるの
骨はとっくに割れていたから
散らばる香りもまた美しい

あぁ、秋まつりだよ
お提灯が
お父さんの代わりに

揺れて
ゆれて

あの日のままに
ゆれて


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