詩の日めくり 二〇二一年十三月一日─三十一日/田中宏輔
高 昭訳)
二〇二一年十三月二十九日 「断章」
ときどきティンセリーナは、留守番電話のメッセージのようなしゃべりかたをすることがあります。あまり何度もおなじ言葉をくりかえしたので、意味を忘れてしまったかのように。
(トマス・M・ディッシュ『いさましいちびのトースター火星へ行く』朝倉久志訳)
二〇二一年十三月三十日 「断章」
足音がジャーミン通りをゆっくりと近づいてきた。そしてはたと止まった。パワーズ船長は目くばせをし、シオフィラス・ゴダールはわずかにうなずいた。足音はまた聞こえ始めた。道路を渡ってキーブルの家のほうに向きを変えた。
(ジャイムズ・P・ブレイロック『ホムンクルス』1、友枝康子訳)
二〇二一年十三月三十一日 「断章」
優れた詩のようにこの夜のできごとは彼らの解いた以上の疑問をかき立て、またその謎のベールをはぎとった。
(ジャイムズ・P・ブレイロック『ホムンクルス』2、友枝康子訳)
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