土佐の夏・記憶を突き抜け立ち上がる光景/ひだかたけし
 

五目寿司と鰹のタタキ、
畳みの居間に匂い立ち
おばあちゃんの
彫りの深い笑顔に包まれて
帰って来た安堵と喜びが
幼い心に押し寄せる

土佐へ、土佐で
一ヶ月の夏が始まる!
光の夏に吸い込まれる!


  *

今、意識が開かれ
記憶を無限に突き抜けていく
溌剌と均衡し躍動しながら
鮮やかに定位するその光景

時間が逆流し溶解する、
時間が逆流し解き放たれる、

世界も時間も味方につけ
立ち上がる瞬間、瞬間に
パックリ永遠は開かれ
喜悦と恐れと驚きに

私は土佐の夏に、ただ生きていた!

私は光の夏に、ただ在った!

内から溢れる自由を生きていた!









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