腸腸夫人/ただのみきや
壱
赤い糸屑が絡んだあばら骨
ソフトな拷問の日々
互いの影を踏まなかった
ひとつに溶けるのが怖かった
通過儀礼から逃げ出して
淫らな踏み絵に額突いて
眼球は自転する
息は静かすぎた
ぼくは塵になって木洩れ日に見つけられる
階段の踊り場から振り返り
希望のメタファーは地の底へと下ってゆく
蝶たちのまつわり戯れる爪先が最初に当たった
しゃれこうべがぼくだ
常夜灯になったあなたへ
青が争う静けさとはいったいなんだ
秘密に焼かれて唇が爛れている
感嘆符と疑問符だけが遺骨のよう
先鋭な意思としてのペニスが
歴史をまとった土着の母神の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)