灰汁/あらい
 
空には星がある、ぼろい暗幕のことだ。
引き裂けぬだけで虫がついて、
大層蝕まれ穴だらけではないだろうか。

それら包まれて流されてきたばかりだった

今日は今日とて曇り空の舌で何を舐め取ろう、
指を濡らして黴だらけの本を掬っては捲る。
泥のような床に乱雑に転がる、誰かの生き様が
嘘も方便もなくあてつけのように連ねてある、
生き恥が個々に氾がっていた星回りの空を綴じる

わたしのその瞳は濁濁と
また細く
モノクル(片眼鏡)の下で深々と雪を追っていた。
探しても掴みようもない儚いものだ。
脳裏を掠めるだけはらりと裸体を曝し
疼くような傷みを鋒だけを保って、その日
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