地球の昼休み/岡部淳太郎
 


私は離れる
私は離れてゆく
離れること
それが私の特技
だがこの胸を包む夕暮れは何か
この掌に?む実体のない砂粒は何か
今日地球は
長い昼休みをとって安楽に
その脚を投げ出している
休みはいつ終るのか
いつになったら仕事が再開されるのか
誰も知らない
仮面の犬よ
歴史を学ばずに大きくなった小暴君たちよ
情ない青は
紅茶の中に沈む
緑茶の中にも
烏龍茶の中にさえも
それが君たちに見えるか
見えてしまうこと
それが私の特技

今朝 私は目醒めた
それは朝ではなくもう午後なのかもしれないが
私にはわからない
目醒めること
それは私にはとても難しい
だが何はともあれ私は目醒めた
地球上のすべての視線は
私を見つめてなどいない
私にはすべてのことが相変らず
下水道の中の出来事だ
私はもしかしたら
人なのかもしれない



(一九九八年十月)
戻る   Point(2)