九月の白い公園/塔野夏子
 
九月の白い公園には
壊れがちな光が降り
睡たげな水がめぐり

ところどころ
彫像のように置かれた
不在
欠落
空虚

彫像のように
けれど輪郭は持たず目に見えず
けれどたしかに置かれてあるそれら
のそばを通りすぎる人と
時折ふと立ち止まる人と

まるでそれらの引力に捉われたかのように
そばのベンチに坐る人と

睡たげな光が降り
壊れがちな水がめぐり
九月の白い公園は
さやかに世界を忘却している


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