莫大なメニュー/ホロウ・シカエルボク
 
つは現代人に科せられたもっとも重い罪さ、静かに、深く潜りながら、沢山のことを手にして、時間をかけて選んでいくんだ、そうでなければ、長い時間をかけて人生を歩いていく意味など無い、秒刻みで無数の選択肢が用意されているノベライズ・ゲームさ、さっきまで居たページに戻ることは二度と出来ないぜ、光景が交錯する、音が混じる、記憶が、血が、真っ当なラインを探す、正解は無くていい、正解には辿り着かなくていい、新しいページの最初の行に目を落とす瞬間が何よりも心地良い、俺の特色は誰よりも人生に貪欲なことだ、これはその取扱い説明書だ、そして証明書でもある、宣誓書であり、何より遺書でもある、さあ、御覧頂こうか、舐め回すみたいに隅々まで吟味しておくれよ、初めに感じた色は必ず変わるはずさ、そうでなければこんなものには何の意味も無いんだ、連続する存在と無、連続する存在と無が、俺にこんなものを綴らせるんだ、生と死が糾われた、極めて奇妙な縄さ、末端を掴め、しがみついて辿って行った先には、必ず悍ましくも美しい生きものが性急な呼吸を繰り返しながら忙しなく眼球を蠢かせている筈さ…。


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