戦う必要はない、ただ光を眼差し/ひだかたけし
 
さっきから
雨が降ったり止んだり
強風が吹いたり止んだり

台風の渦が東京に接近する

私は痛む両眼を指先で押さえる
この静謐な心を壊さぬよう
私は痛む両眼をそっと

クール宅急便のトラックが止まっている
ベランダの向かい下に止まっている

詩想せよ、詩想せよ
軒先を落ち続ける雨垂れに
遠い故郷を想起するように
背筋を伸ばし意識を醒まし
灰色に蠢く雲を凝視し

白髪が落ちる、天の光彩に
わたしは身一つの希望をみた
白痴のような美少女が通る
君は地の果てに住むようだ
純白のまま、無垢なまま
世間というごみ溜めを
両手を広げ渡ってゆく
短い時を花開き
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