イマ腎/ゼッケン
のものではない
仰向けのまま、腕を横に伸ばし、コンクリートの表面を流れる水に掌を立ててせき止めてみる
それから滞った流れを払う
炎が鎮まり、飽きたおれは立ち上がって地上へのエレベーターに向かう
おれの全身からガソリンの匂いが混じった水が滴り、エレベーターの床を濡らす
地上も火の海だ
上昇が止まり、扉が開く瞬間のエレベーターの箱の中でおれは
もちろん、地上が廃墟になっていないことを知っており、
破滅の予感が裏切られたことに安堵する自分を想像して安心を先喰いする
おれは安心中毒患者で
好んで悪夢を見て絶叫するのは
自分が目覚められると信じ込んでいるからだ
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