イマ腎/ゼッケン
 
地下駐車場に止めてあった高級外車にガソリンをかけて火をつける
三つ又の銀色のエンブレムがボンネットの先端についている
メルセデスベンツぐらい、クルマに興味のないおれにだって分かる
炎が上がり、熱を感知した天井のスプリンクラーが次々に激しい水流を噴き出させる
警報音と警告ランプの点滅に周期のずれがあり、相殺と相乗から成る唸りが熱的に死んでいた地下の閉鎖空間に昂りを生んだ、おれも気分がよろしくなってきた
おれは都市の地下の祭壇で護摩を焚き、人工の滝に打たれて身を清める
家族はまたかとあきれ顔になるだろう
自分のクルマに放火する癖がおれにはあるのだ
ときどき、おれは自分の経済力がたまらな
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