水の地をすぎて ?/木立 悟
 

初めての雨粒を語り継ぐ


線路の向こうから建物を見
銀河の向こうから故郷を見る
背には常に滴の跡
さらに遠い背につづく地図


蒼から白へとこぼれる空
端の曲がった紙から先に
地と海の間に消えてゆく
幾十も幾百も 背にあふれる羽の息


濃い霧
避けようのない波
雨と雨を指でひらくと
菓子のにおいがやって来る


咲いては消える水の花
音だけを残す夜の花
霧の街に散る霧の花
拾い集めてはすぎてゆく子ら


水たまりの底に花があり
深すぎて深すぎて届かない
光 爪 月 蒼
遠まわりの径を描き出す




















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