水の地をすぎて/木立 悟
くやわらかく空に逃れる
たくさんのものを置き去りにして
ただひたすら横に跳ぶ光が
額と頬の間をすぎてゆく
それは何処へも着くことがない
何処かで曲がり 繰返している
氷の音 横顔の口笛
吐息の色が光にほどけ
受けとめる指のかたちを編んでゆく
射るほどに 斬るほどに編んでゆく
湖を囲む湖
一本の径 少しの霧
淡い淡い緑の上に
すぐに消えてしまうものが降りつもる
受け止められる分だけ受け止めて
降らない土地に置いては進む
残ることのないまぶしいもの
何処かに何処かに灯りつづける
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