森の地図/soft_machine
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今年の森の地図が
そろそろ終わりだから
恵みにあやかりたいと
降りた自転車を立てかけた
裂け目のような木の下闇からは
あからさまな拒絶の気配を感じたが
それは人間の都合
森はただ
そこにあるだけ
いま入らなければ
明日はこないのだから
静かに訪れた
こちらからどうぞと病葉が
また一歩
巨大な両顎を開く
あそこ 円錐に沿って昇るのは
片翼の鳶
その向こうには
一本の小径があって
見て 少女がおにぎりを並べている
誰が近づいても
一向 構わない
ただ透きとおるだけ
懐かしいジャズが聴こえ
渋い演歌も混じる
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