魔鏡の焦点/ただのみきや
 
ろな箱の受け渡しを
鳥のように抜け出して見下ろしていた


虫に食われて穴だらけになって
夜が捨てられていた
星たちの忘却をいくつか宿したまま


想いがかたちを持つのなら
死者も花を咲かすだろう


光に目隠しされて
彼岸と紐づけられて
鈴が鳴れば
小さなプールに時を溜めて


鏡の破片が溺れている


この花の蜜をよく吸ったものだ
その名を生涯呼ぶことはない
夏の死体から生えて咲く
青く燃えるこの花の



                   《2022年9月10日》







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