世界の変化、あるいは彼らの戦い(一)/朧月夜
再び時と所は変わって、ここはエイソス邸の前である。
フランキス・ユーランディアは、エイソス邸の塀の影に隠れていた。
(わたしは、祭祀クーラス様の辞令を受け賜った。
この国のため、祭祀クーラス様のため。この身を賭けなければばらない……)
そんな他愛もない情熱を、誰が笑うことが出来たであろう。
フランキス・ユーランディアは、命を賭していたのである。
それはつまり、こういうことだ。国家とは、様々な思惑の上に成り立っている。
しかし、フランキスが今行おうとしていることは、影仕事なのだと。
それはよく分かっていた。だから、フランキスの額にじとりとした、
汗が滲む。それは、やがてフランキスの目に入り、彼を苦笑させる。
(俺は今、正義とは正反対な事柄に臨もうとしている。たがしかし……)
それがクールラントという国家のためだと、フランキスは信じていた。
(俺は今から、クシュリー・クリスティナ、エイソスの嫁を盗む。
ああ、クーラス様。これが本当に「正義」なのですか? わたしは……)
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