車輪の美的側面/菊西 夕座
敵も女神も青春も窓をとじるが 恋するふたりの瞳(め)は円くふくらんだまま
青信号の無制約からこぼれ落ち たとえ玉座が坂道の凹凸に足をとられても
側面の観覧車はゆるやかに回りつづけ その七光りするゴンドラの窓から
王者をささえる万民が手をふって 信号まちの車に助けをもとめてくれる
抱き起こされた漕ぎ手の涙で ぬれた車輪がいっそう霊妙にきらめいている
廻れ廻れまわっておくれ 太神楽師が毬をころがす和傘のように
ただ目の前を通過するだけの縁で 心をつなぐ風の糸をまきながら
漕いで漕いでこいでおくれ 自動車のタイヤにはない手心こめて
眩暈と幻想とロマンスの渦で 失われた日々も側面に巡らせて……
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