車輪の美的側面/菊西 夕座
二足歩行者にはない美的側面が 視界のすみを唐突にふちどると
信号まちから一転して青に旅だち 横断歩道へと車輪をころがす
ハンドルを握る停止の瞳を 優雅な回転にまきこみながら
視界の赤道をなぞる太陽のように 車輪の側面をうたわせてゆく
フロントガラスの先をまるで小さな観覧車がよこぎる賑わい
車いすの不自由な漕ぎ手は 蛍光の輻(や)を虹色に点滅させて
二足歩行者にはない画布的側面で 自らの王国を存分に描きだす
壮麗さと優美さと、愛らしいまどろみと、華やぎをつれて……
黄色い足枷から浮く奇術師も 夕日に影をはべらす痩せ案山子も
俊敏な黒豹の駆けだしも 丘いちめんに沸き
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