ハーレスケイド、探索(九)/朧月夜
 
「くよくよ悩んでいても仕方がないぞ、ヨラン」
一行の誰よりも早く、己を取り戻したのは、アイソニアの騎士だった。
さすがに、彼は状況を読み取る能力に優れていた。この時も、である。
「明日になれば、彼女は帰って来よう。今は、ここで野営をすることだ」

「また野営か……」エイミノアは呟いた。数日前の記憶が蘇ったのである。
「お前……エイミノアと言ったか。まさか、この旅を恐れているのではあるまいな?」
アイソニアの騎士は、悚然としているエイミノアに声をかける。
「これは、アイソニアの騎士殿。わたしは恐れているわけでは、ありません」

「ならば良い。汝は、自分の理性が通じない場面もある、
 ということを心得ておく必要があるだろう」アイソニアの騎士は、優しい面持ちで言った。
「恐縮でございます、騎士様。もしもエインスベル様が……」

「ちょっと待て!」エイミノアの言を遮るように、アイソニアの騎士が声を上げる。
「どうかなさいましたか?」エイミノアは、アイソニアの騎士の変貌に驚く。
「いや、何でもない。明日までは眠ろう。余計なことを考えても仕方がないのだ」
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