泥つきのステップ/菊西 夕座
おれの名前は泥つきのスコップ
またの名を墓あらしのスキップ、あだ名は泥まみれのステップ
赤錆の返り血をあびたあばら家に
おれをそっと 逆さに立てかけてはくれないか
おれは自由であることに おぼれていたいと思うのさ
つぶれた顔して錆におぼれるそのように
自由を左右のエラに のせて得意でいたいのさ
まるで青い小鳥をとめているかのような気で
泥つきのおれを 脱走兵にひきずらせていく
魂性なしで宿無しの肉体労働者に。
めあての墓にはヒトリシズカが咲いている
墓石も墓標も 枯草とてもないのに
自由はないと 電動ドリルはいうけれど
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