かにのみこそのかみ/菊西 夕座
 
生えた命を摘み取るわけ?
――その感傷も脱ぎ捨てればどうなる。
話だけが残るわ
――命も与えれば奪われるだけの話さ。
それでも話は降りつづけるの
――名前でも付けてどこかで止めないと。
話をタクシーみたいにいわないで
――わタクシは泊めてくれたのに。
それは一夜だけの思い出話
――それはカナシーね。
カナシとは確かに下半身を成したわ
――彼氏でしょ。
半信半疑なところもあるけれど
――たしかに彼氏だよ。
鼻ナシ―だったかもしれない
――鼻がなければ顔が台無し。
ダイナシーよりシンパシーは感じたの
――心配したのか。
心肺テイシーだったかも
――それはだいぶ心配
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