流れるごとく書けよ、女詩人/藤原 実
 


馬は山をかけ下りて發狂した。 その日から彼女は?い食物をたべる。 夏は女達の目や袖を?く染めると街の廣場で樂しく廻轉する。
テラスの客等はあんなにシガレットを吸ふのでブリキのやうな空は貴婦人の頭髪の輪を落書きしてゐる。
悲しい記憶は手巾のやうに捨てようと思ふ。戀と悔恨とエナメルの靴を忘れることが出来たら!
私は二階から飛び降りずに済んだのだ。
海が天にあがる。



{引用=「彼女の様な特殊な頭腦は、教養や訓練に待つまでもなく、生れ乍らに完全なのかも知れない。そのやうに彼女の詩も亦、最初の一篇より完成してゐたのだつた。その類推の美しさが、比喩の適切が、對象の明晰がそれらに對
[次のページ]
戻る   Point(1)