流れるごとく書けよ、女詩人/藤原 実
。彼女は戦後も詩人としての活動を続け、『日付のない日記 』(思潮社, 1965)では、
樹も泣いた
鳥の躯も
馬の白骨も
みんな魔法にかけられて
身うごきもせずに ひつそりと
息をひそめて死の姿を見守っていた
それは堪え難いほど静かな世界だつた
私は死と隣りあわせ
生きた心地もなく現実にたたずんでいるだけだつた
ただ倒れまいとして
(中村千尾「日付のない日記」より)
というような、モダニズムの実験的な美学を現実に消化した詩を書いており、私は好ましく思いました。
ただ、不幸なことに戦後詩史において彼女たちがよりどころとしたモダニズムの理
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