きみの猫をデッサンする/ただのみきや
 

癇癪 ねこなで声 癇癪
ヤママユを食う
サアに嫉妬して
指摘されれば埴輪の顔
全身に書かれた説明書の類
自分の猫とも知らないで


きみはパラシュート
地をすべる小さな影の邪魔ばかり
美しい装いのはしたない展開図
空き巣の後の収納タンス
散らかった記憶
五歳の自分
十二歳の自分
十九歳の自分
ホルマリン漬けもすべて模型
猫はすり抜ける
きみの歴史も地理も
猫はわがままだ
法則にも法律にも
愛情深く薄情だ
自分にも他人にも
素のままの不可思議で
きみの背筋を凍らせる
殺意と冗談が宝石みたい
ダンスする
きみに興味はないけれど
きみの猫が好きだから
ささやくようにしのびよる
風のない部屋
けむりのようにデッサンする
きみの猫とダンスする



                 《2022年8月28日》








    
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