冷静な時間/霜天
静かな朝には開いていく
手のひら
両手で作った部屋に
吐き出せるだけの息を詰め込んで
冷たい朝を胸一杯に仕舞う
これ以上ないというほどの儀式
つま先が浮くほどに
ここから一日になる
逆巻く心音で時計が上手く読めない
僕らの旅は今、そんな所にいる
手探りだろうと迷うはずはない
らしいけれど
僕らは今、そんな所にいる
泳ぎ方を忘れてしまった
息継ぎの仕方は教わっていない
沈んでいく水の中で目を開けると
すべてが
歪むように揺らいでいくので
確かな景色は内側にあるように思えてくる
まぶたの、裏
どこからが、朝なのか
腕時計が、かちりかちりと
僕らに刻み付けていくのを
目を閉じたその奥で感じている
眠りに落ちる、ということをする
迷う間も冷静に流れていくことに
ありがとう、と言う人たち
僕らの旅は今、そんな所にいる
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