ヨランの挑戦(一)/朧月夜
「ここでございます」と、ヨランは、本の一角を指し示した。
それは、ヨランが背嚢から取り出したメモ書き、『ハーレスケイドについての報告』
という一冊の、一つの書物の、そして一つの考察の、
「ハーレスケイドの地理について」という綴りの一節であった。
「ヨラン……。お前は?」アイソニアの騎士が伺う。
「はい。わたしは、ハーレスケイドについては、
オスファハン邸で捕らわれていた二日の間に、
あらかじめのことは、調べておきました」ヨランは笑ってみせる。
しかし、その微笑に二人ははっとした。もちろんアイソニアの騎士と、傭兵エイミノアである。
「ヨラン。俺は、余計な情報は望んでいない。ただ、俺はここがどこか?
と尋ねたのだ。ハーレスケイドという異界、その奈辺に、我らはいるのかと?」
「騎士殿。この期に及んで怯むのは、お止めくださいませ。あなたは、
エインスベル様のために、その身の覚悟を決めたのではないのですか?」
アイソニアの騎士は憮然とする。「俺は、単に俺たちの現在地を求めただけだ」
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