球体の幽霊/ただのみきや
二人の会話も水没して遺跡へ還る
時の流れは表層にすぎず
ましてや真っ暗闇
マッチ一本擦って消えるまでの
意識といのちの混同なんて
またすぐ誰かに発見されて
再定義される
そうやって繰り返されて来た
水面に映る顔ばかりが新しく
血の文字だってすぐに水にとけて
よい名付けだけが残る
それは名であって本体ではない
だれも所有できない
みんなただ戯れにダンスに誘うだけ
真剣なのだと尾ひれ背びれを翻して
雨の弾幕
地は白く血飛沫をあげて
樹木は嘔吐する
隙間もなく唇は塞がれて
沈黙の連弾に
発芽する心臓がある
消しゴムで擦った夜の
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