言ふなかれ、君よ、わかれを、/藤原 実
爭詩を輯録した小冊子である。 早速通讀してみたが遺憾ながら感銘に殘るほどの作品は甚だ乏しかつた。詩歌と稱する以上は時事を取扱はうが戦争を對象として單なる敍情詩風のゆき方と趣を異にしようが、所詮は詩歌としてのかんどころの一點をとり外しては相成るまい筈のところを、どの作品もどの作品も、枝葉の敍事にかかづらはつて詩情の一貫するものを缺き、拙劣な散文の詩的形態を僣した悪詩非詩に墮してゐるのは甚だ見苦しく殘念であった。集中讀むに耐へるのはやうやく織田旗男氏の二篇と火野葦平軍曹の一篇位のものであらう。共に作者は出征中の 實戰體驗者であるのは、かかる詩歌が銃後作者の空想裡の出?物としては到底無力平凡の域を脱しき
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