ひかりのえんぴつ/やまうちあつし
 
伝えたいときに
伝えたい相手がいないというのは
なんと苦しいことだろう
猫の手をいくら借りても
そのへだたりを
消し去ることはできないだろう
だから
ひかりでできたえんぴつが要る
空気の中に詩を書いて
去ってしまった人へ
壊れてしまった人へ
変わってしまった人へ
変われないままの人へ
文字なんか書けない夜にも
ひかりでできたえんぴつは
線や円を素敵に描き
右手の左手のあいだでまたたく
もうそんなに
憎まなくていい
魚になったあの人に
いつの日か思い出し笑いが

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