真夏の陰で/
 
灼熱の中に立ちながら

ここまでの道程を思う

陽炎の中でさ迷いながら

呼吸をしていることに気づく


年月の寄辺に佇みながら

喪われた心を思う

歳月の波打ち際にさらされながら

人の心に巣食う社会を嘆く


蝉の雄叫びを聞きながら

自分の凡庸さを歓ぶ

その儚い命が散るのを見ながら

自分は須く独りであると知る


どうしようもなく独りであり

どうしようもない夢を視ている

その救いようのなさを

まだ少しだけ愛している
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