ことばに映っているのは誰の顔か/ただのみきや
 
自分の焼死体を引きずって歩く
照り返しは閃く刃物
陰影は深くすべてを潜ませて
輪郭の途切れから染み出して来る
夜の水の囁きに指をあてながら

ひとつの響きが起こる前の静けさ
ひとつの響きが途切れた後の静けさ
虚空から虚空へ ただ立ち尽くす
いまそこに在ったという感覚と
どこにも無いという現実に

ひとつの舞踏
始まりがあり
終わりがある
時は胎からあふれ出す
世界が始まる前の静止から
世界が終わった後の静止へ
流れてゆく身体は記号化する
だが音楽はともにあって
自らを見えざる身体とした
やがて世界は閉じる瞼のように
暗転する
またひとつ喪失を得て

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