パス・スルー/ホロウ・シカエルボク
 
ど、人間は感じていることのすべてを自覚することは出来ない、洗面で鏡を覗き込んだとき、鏡像の中から身体になにかが飛び込んだ気がした、身支度を整えて部屋を出ると、玄関の扉にやたらと大げさな音がする鍵を掛けた、外は思っていたよりもずっと暑く、すれ違う連中のほとんどが殺意を持っていた、そしてあらゆる感覚はアスファルトに染み込み、派手な車が脇を擦り抜けて行った瞬間、ボンネットに反射した空に虹が隠れているような気がした…新しい靴を買おうと思った、時間はまだ腐るほどあるのだ。


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